アレルギー性鼻炎・花粉症

アレルギー性鼻炎(花粉症)とは

風邪を引いていないのに、鼻水やくしゃみ・鼻づまりなどの症状が見られたら、アレルギー性鼻炎が疑われます。アレルギー反応とは、花粉やほこりやダニなどのハウスダスト、フケ・カビなどに過敏に反応を起こすことを言います。アレルギー性鼻炎には、季節性のものと通年性のものがあります。中でも、花粉症はスギ花粉によるものが非常に多いですが、スギ花粉以外でも症状が現れることがあります。都内のスギ花粉症の有病率は半分弱と言われています。

アレルギー性鼻炎の原因

アレルギー性鼻炎の原因となる物質をアレルゲンと言います。アレルゲンには、花粉やほこりやダニなどのハウスダスト・カビなどがあります。これらのアレルゲンが呼吸などによって体内に吸い込むと、体内では抗体が出来ます。これらの抗体が粘膜などに付着することで、再度アレルゲンを取り込んだ時に抗体に過敏に反応して、鼻水やくしゃみ・鼻づまりなどの症状が現れます。アレルギー性鼻炎には、季節性と通年性の2種類に区別されます。

季節性アレルギー性鼻炎の原因

スギやヒノキ・ブタクサ・カモガヤなどの花粉

通年性アレルギー性鼻炎の原因

ほこり・ダニ・フケ・カビ・ペットの毛などあらゆるハウスダスト

花粉症を引き起こす植物の花粉飛散時

アレルゲン飛散時期
スギ花粉1月頃から始まって5月初旬まで
ヒノキ花粉3月頃から始まって6月初旬まで
ブタクサ花粉8月から始まって10月頃まで
カモガヤ5月頃から10月頃まで

アレルギー性鼻炎の症状

鼻水・鼻づまり・くしゃみなどが主な症状です。粘性のない水のような鼻水が垂れる・くしゃみが何度も出る・鼻が詰まって呼吸しにくいなどの症状が見られたら、アレルギー性鼻炎が考えられます。そのほか、涙が流れる・目が痒いなどの眼症状も現れます。また、1日のうち朝方や夕方にアレルギー症状が酷くなるケースが多く見られます。

アレルギー性鼻炎の治療

アレルギー反応を完全になくすことが困難なため、つらいアレルギー症状をなるべく軽減し、免疫力を上げることが重要となります。症状緩和には、極力アレルゲンを避けます。

保存的療法

薬物療法

アレルギー症状に応じて、点眼薬・点鼻薬・内服薬を用いて症状を緩和させます。当院では、眠気が強く出ない薬剤を処方しております。

減感作療法

アレルギー性鼻炎の根本的治療とされているのが、減感作療法です。原因となるアレルゲンを体内に少量ずつ取り入れて、アレルゲンに対する過剰反応を抑えます。舌下免疫療法と皮下免疫療法があり、当院では舌下免疫療法を取り扱っています。

外科的治療

重度のアレルギー症状がある方や、毎年スギ花粉症でお悩みの方には、外科的治療を行います。その年の花粉飛散量によっては症状が悪化することがありますが、花粉症の内服薬を減らすことができる可能性があります。外科的治療が必要な患者さんには、対応可能な医療機関を紹介させていただきます。

よくある質問 Q&A

アレルギー性鼻炎と花粉症は違うのですか?

アレルギー性鼻炎には、決まった季節にアレルギー症状が現れる季節性と、一年中アレルギー症状がある通年性とがあります。花粉症は花粉の飛散時期にアレルギー症状が現れる、季節性アレルギー性鼻炎です。花粉症の場合、鼻炎の症状以外に目の痒みや流涙・のどの痛みなどのアレルギー症状が現れることが多く見られます。

花粉症の原因はスギとヒノキだけですか?

花粉症の原因は、春の時期に飛散するスギやヒノキだけではありません。原因となる植物は国内でも約60種類以上もあるとされています。日本で患者さんの多くがスギやヒノキの花粉症ですが、これ以外にも初夏のカモガヤ、秋のブタクサ・ヨモギなどの花粉症もあります。

アレルギー性鼻炎は遺伝しますか?

アレルギー体質は遺伝することが多く、親族などにアレルギーがある場合、アレルギー性鼻炎が起こるとされています。ただし、遺伝による発症が全てではなく、生活環境が大きく影響します。アレルギー性鼻炎の症状が現れる原因やその時期については、個人差があり、ある程度特定することが可能です。

アレルギー性鼻炎による症状による日常生活への影響は?

アレルギー症状として、鼻水やくしゃみ・鼻づまりなどの症状が長期間続くため、煩わしさと集中力低下や気力低下・記憶力低下などによって生活の質が全体的に低下します。それに伴って、イライラや全身倦怠感・寝不足・不眠・頭痛・鼻づまりによるのどの痛み・痒みなどの症状が現れます。これらの症状によって、仕事や学業など日常生活に大きな支障を及ぼす可能性があるとされます。

アレルギー性鼻炎は完治できますか?

アレルギー性鼻炎の発症は、体質が大きく関わるために完治が難しい疾患とされます。アレルゲンを除去して接触を断つ、あるいは抗原を少量ずつ体内に取り込み免疫力を高める減感作療法などの治療が検討されます。減感作療法は効果が得られるまで時間がかかりますが、ハウスダストが原因の場合は約70~80%に、花粉症の場合は30~60%に効果が見られています。

薬物療法以外の治療方法はありますか?

薬物療法以外には、様々な手術方法があります。鼻粘膜にレーザーを照射する手術や、焼灼術などがあります。重度のアレルギー性鼻炎で鼻づまりがある場合は、鼻の中央の曲がった鼻中隔左右の仕切りを切除して真っすぐにする方法や、鼻の内部にある下鼻甲介骨といわれる骨を切除して、鼻通りを良くしていきます。アレルギー症状や患者さんの状態によって適切な手術治療は異なります。手術が必要な患者さんに関しましては、手術を行っている病院への紹介をさせて頂いております。アレルギー症状でお悩みの方は、まず当院までお気軽にご相談ください。

舌下免疫療法とは?

アレルギー性鼻炎の唯一の根本的治療とされているのが、減感作療法と舌下免疫療法です。昨今ではスギ花粉の舌下免疫療法(シダキュア)とダニの舌下免疫療法(ミティキュア)は、アレルギー性鼻炎の重要な治療法として定着しつつあります。シダキュアは6月から11月末まで、ミティキュアは時期に限らず開始が可能です。皮下免疫療法と比較しますと安全で注射の痛みが無く、副作用も軽度です。6歳からの治療が可能で、効果が出るのは65歳までとされております。子供の方が効果が高い傾向にあります。

日本では最も多いアレルゲンはスギ、その次はダニです。室内のホコリをハウスダストと呼びますが、多くはダニです。鼻の症状だけではなく目の症状にも効果が出るのがメリットです。特に春のスギ花粉症がお辛い方にはお薦めです。また気管支喘息はダニアレルギーが関与していることも多いため、ダニ舌下免疫療法は気管支喘息の予防につながります。薬物療法を行ってもあまり効果が出ない方にはおすすめしております。

方法としましては、原因となるアレルギーの物質(アレルゲン)を体内に少量ずつ取り入れて、アレルゲンに対する過剰反応を抑えます。現在はスギ花粉症とダニに対して、舌下免疫療法を施行することが可能です。最初にアレルギー検査による確定診断が必要となります。治療の適応だけでは無く、治療を開始した後の予後予測を行う上でも、View39によって一通りスギ、ダニ以外のアレルギーに関しても調べておくことをお薦めしています。

治療効果はおおよそ7割と言われておりますが、3-5年は毎日内服を継続していただく必要があります。早期に中断をしてしまうと効果がすぐに落ちてしまいますが、一方で治療年数が多ければ多いほど、高い上乗せ効果を期待する事ができます。アレルギー検査の結果、+の数が多ければ多いほど、治療にかかる期間は長くなる傾向があります。

確認事項

以下の項目に同意を頂いた患者さんは、舌下免疫療法を開始する事が可能です。

  • 長期間の治療を継続いただくことはできますか。(途中でやめるとすぐに元に戻ってしまいます)
  • 1ヶ月に1度の定期的な受診にご同意いただけますか。
  • 薬の副反応が出た場合は、必ず医師にご相談を頂けますか。
  • 治療を終了や中断する際には、医師にご相談を頂けますか。

服用に関して

  • 服用手順をご理解いただけましたか。(舌の下で1分間保持、服用後5分間はうがいや飲食を避ける、服用後2時間の激しい運動、アルコール、入浴の禁止)
  • 最初の1週間、2週間以降の服用スケジュール、服用を誤った場合の対処法を理解いただけましたか。
  • 服用前および服用後2時間は激しい運動、アルコール摂取、入浴をしない事、服用後2時間以降にこれらを行う場合にもアナフィラキシーなどの副作用の発現に注意する事を理解いただけましたか。
  • 医師に相談する事項(体調が悪い時、口の中に異常があるとき)を理解いただけましたか。
  • 開封時の注意(乾いた指でとりだすことなど)や取り扱い時の注意(他の人に使用させないことなど)について理解いただけましたか

副作用に関して

次のような副作用が起こる可能性があることを理解いただけましたか。

主な副作用

口の中の腫脹、かゆみ、不快感、違和感、口内炎、唇の腫れ、喉の違和感、かゆみ、不快感、耳のかゆみなど

重大な副作用

ショック、アナフィラキシー

  • 服用後少なくとも30分間、服用開始時期は副作用の発現に特に注意する事を理解いただけましたか。(シダキュアの場合はスギ花粉症が飛散している時期にも注意が必要です)
  • アナフィラキシーとその早期に見られる症状について理解いただけましたか。
  • 副作用(特にアナフィラキシーで早期にみられる症状)が現れた場合の対処法(医療機関に受診をするなど)を理解いただけましたか

舌下免疫療法を施行できない方

  • 重症な気管支炎、気管支喘息のある方 ・非選択的β遮断薬内服中の方
  • 5歳未満、65歳以上の方
  • 悪性腫瘍の治療を受けている方
  • 免疫疾患の治療を受けている方
  • 心臓病の治療を受けている方 ・ステロイドを飲んでいる方
  • 精神科、心療内科での治療を受けている方
  • 口腔内に異常のある方、口内炎、歯槽膿漏のある方、抜歯の予定のある方
  • 薬や注射、食べ物でアレルギーを起こしたことのある方
  • 現在治療中の病気がある方
  • 他に飲んでいる薬がある方
  • 妊娠している女性、授乳している女性
  • 風邪をひいている方、体調の悪い方

Q&A

舌下免疫療法を開始する際に、アレルギーの採血は必要ですか?

舌下免疫療法の開始には、スギ、ダニのアレルギーの採血による診断が必要不可欠です。アレルギーの度合いにより治療を推奨する期間が異なってくる場合がございます。スギ、ダニに強いアレルギーがあり、その他に殆どアレルギーが無い方が、舌下免疫療法の最も良い適応となります。またスギ、ダニ以外のアレルギーに関しましても、一通り調べておくことをお薦めします。スギ、ダニの他にアレルギーが多い方の場合、効果が不十分なケースや、副反応が強く出るケースがあります。一方で3-5年経過しましたら、アレルギーの数値が改善しているか否かを確かめるために、再度のアレルギー採血を行う事をお薦めしております。

アレルギーがどれくらいひどければ治療をした方が良いですか?

軽症であればあるほど、早期に治療ができる可能性が高くなります。アレルギー採血により診断がされた場合は、できる限り治療はした方が良いです。

舌下免疫療法を行ったら、アレルギーの薬を飲まなくてもよくなりますか?

アレルギーの薬を飲まなくてもよくなる方は2割前後です。基本的には「今よりも症状を軽くするための治療」とご認識を頂けますと幸いです。ただ体質によっては残念ながら、全く効果が出ない方もいらっしゃいます。

いつ薬を使ったらよいですか?

初回投与の際には万が一副反応が出てしまった場合はやめに対処ができるよう、朝食前の内服をお願いしております。導入が落ち着きましたら、飲み忘れの少ない「夕食前」の内服をお薦めしています。この場合夕食は内服5分後、入浴は内服2時間後にお願いします。また飲み忘れの心配の無い方でしたら「就寝前」の内服でも良いと思われます。

初回投与の受診の仕方はどうなりますか?

未成年の患者さんは、初回投与時とその1週間後の、2週間連続の来院および、30分の院内待機が必要となります。院内での30分の待機が必要となるため、18時以降に来られた患者さんに関しましてはお薬の処方のみをさせていただき、次回来院時の投与とさせていただきます。一方で20歳以上の患者さんは初回投与は30分待機、問題が無ければ2週間分のお薬をお渡ししますので、その次は2週間後にきていただく形となります。可能であれば初回投与に関しましては、副反応が出る可能性もあるため、早めの時間に来ていただく事をおすすめします。自宅でお薬を飲んで調子が悪くなった場合はまず当院へ、当院の診療時間外には後方支援病院への電話連絡をお願いします。

薬の飲み方を教えてください。

1日1回薬を乾いた手で舌の下に入れて、1分間保持します。薬を置く場所は毎回ずらすようにして下さい。お薬が欠けたり割れたりしてしまった場合は、それらも一緒に服用してください。1分間経過後に薬を飲みこみます。その後5分間はうがい、飲食を控えて下さい。また副反応の強い方の場合、1分間保持した後に吐き出す「吐き出し法」という飲み方をお薦めする場合がございます。吐き出す場合と飲み込んだ場合で、それほど効果の差は出ません。一方で舌の下に1分間保持せずに飲み込んでしまった場合は、効果が落ちます。

薬を飲み忘れてしまいました。

翌日から薬を1錠飲んでください。2錠は飲まないようにしてください。

間違って沢山飲んでしまいました。

直ちに吐き出してうがいをしてください。

間違って舌の下に保持せずに飲み込んでしまいました

翌日から薬を1錠飲んでください。決してもう1錠飲まないようにしてください。

薬を中断してしまいました。

薬を中断してしまった場合、1ヶ月以内であればご自身のタイミングで再開をしていただいて構いません。一方で服用を中断し1ヶ月以上経過してしまった場合は、再開時は医師の診察、初回投与量への減量が必要となります。

アレルギーの薬と一緒に飲んでも良いですか?

アレルギーの薬との併用は可能ですが、ステロイドと一緒に飲むと効果がうすまってしまいます。

風邪をひいているときや体調が悪い時はお薬は飲めますか?

体調が良くなるまで休薬をするようにしてください。

口の中の傷や炎症があるときはお薬は飲めますか?

口内炎がある時や、抜歯などの手術や、治療を行った場合は、傷から薬が入り効きやすくなってしまうため、休薬をしてください。またお子様では、歯の生え変わりで口の中が出血をしている場合も、休薬が必要となります。傷の痛みが無くなる程度になれば再開は可能ですが、一度再開前の診察をお薦めします。

予防接種を受ける時はお薬は飲めますか?

インフルエンザワクチン、新型コロナウイルスワクチン等、予防接種を受ける日は必ず休薬をして下さい。翌日以降体調に問題無ければ再開をしてください。

旅行に行く時はお薬は飲めますか?

家族旅行、修学旅行、林間学校、部活の合宿など、肉体的にも精神的にも日常と大きく環境が異なりますので、旅行中は原則休薬をして下さい。旅行が終わった翌日以降に体調に問題が無ければ再開をしてください。

口の中に傷や炎症があるときはお薬は飲めますか?

休薬してください。再開可能の判断は医師の診察が必要になります。

学校の1限目に体育の授業があります。

薬を飲んで運動をするまで2時間以上あける必要があるため、朝に内服をする場合は早起きをして食前に内服をして下さい。その際は朝食は5分以上あけて下さい。早起きが難しければ、「夕食前」や「就寝前」の内服をお薦めします。

副反応が心配です。

副反応は投与量が増えると増えます。一次的に減量が必要な事もございますが、適切な対処で再増量できる事が多いです。副反応が強い方は1分舌下に保持した後に吐き出す方法を選択いただく事もあります。この方法でも効果は大きくは減らないとされております。重篤な副反応は極めてまれとされておりますが、有事の際はまずは当院、もしくは後方支援病院へのご連絡をお願いします。

シダキュアとミティキュアを同時に飲むことはできますか?

まず副反応の少ないと言われているシダキュアから開始していただきます。内服後1ヶ月間問題が無ければ、ミティキュアを朝、シダキュアを夕という飲み方で開始をします。ミティキュアの初回投与の際は、シダキュア同様30分の院内待機が必要となりますのでご了承ください。ミティキュアを朝、シダキュアを夕という飲み方で1ヶ月間問題が無ければ、ミティキュアを先に内服し5分後にシダキュアを内服する、という飲み方に変更ができます。

以前に皮下免疫療法を受けたことがあります。

投与方法は異なりますが同じ類の治療にはなりますので、どの程度効果がでるかは分かりません。