いびき・睡眠時無呼吸症候群

いびき・睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時に呼吸が止まり、血中酸素濃度が下がってしまうため心臓や脳に大きな負担がかかります。慢性的な睡眠不足となり、昼間の眠気や頭痛などを引き起こすため、交通事故などを招く恐れがあります。また、夜間の頻尿や高血圧・狭心症などの原因になるとされています。

睡眠時無呼吸症候群の定義

睡眠中に呼吸が止まる無呼吸が、1時間あたり10回以上ある場合、睡眠時無呼吸症候群とされます。また、低呼吸といって、呼吸が弱くなることで腹や胸の運動が約50%以上低下する状態も、1時間あたり10回以上認められると睡眠時無呼吸症候群とされます。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群

鼻からのどまでのいずれかで閉塞が起きているのが原因

中枢性睡眠時無呼吸症候群

脳の呼吸中枢からの指令がないのが原因

混合性睡眠時無呼吸症候群

閉塞性と中枢性が混在して起きている

いびきと睡眠時無呼吸症候群との関係

鼻からのどまでのいずれかで起きた狭窄部位が閉塞することで起こるのが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。いびきは、鼻からのどの上気道のいずれかで狭窄しているのが原因のため、いびきと睡眠時無呼吸症候群が交互に出現することが多く見られます。これを、いびき・睡眠時無呼吸症候群と呼んでいます。

睡眠時無呼吸症候群の自己診断

睡眠時無呼吸症候群の主症状である、日中の眠気の重症度を診断するEpworth Sleepness Scaleを基準に、睡眠時無呼吸症候群の自己診断が可能です。以下を参考に、ご自身で判定できます。

判定

0:眠くなることはない
1:時々眠くなる
2:よく眠くなる
3:大体いつも眠たい

10点以下:正常
11~15点:軽症
16点以上:重症

1.座って読書している時0123
2.テレビを見ている時0123
3.映画館や会議中に座っている時0123
4.他人の運転する車に乗っている時0123
5.午後、横になっている時0123
6.座って人と話している時0123
7.昼食後、静かに座っている時0123
8.自分で運転中に信号待ちの時0123
合計点数(   )点

いびき・睡眠時無呼吸症候群の原因

  • 加齢
  • 筋緊張の低下
  • 肥満
  • 口呼吸
  • 小顎

があります。上気道の狭窄が原因で起きる病気のため、耳鼻咽喉科が窓口となって診断をしている疾患です。

睡眠時無呼吸症候群の症状

  • 家族にいびきが大きいと言われる
  • 家族に呼吸がとまっていると言われる
  • 夜中に息苦しくて何度も目が覚める
  • 夜中に何度もトイレに起きる
  • 寝汗をよくかく
  • 寝相が悪い
  • 朝起きた時に頭痛がする、口や喉が渇く、胸やけがする
  • いくら寝ても熟睡感が無く、疲れがとれない
  • いつもよりも血圧が高い
  • 日中に強い眠気、だるさを感じる遅刻、欠勤等の仕事上のトラブルを指摘されることが多い
  • 太っている
  • 1年以内に体重が3キロ増えた
  • 以前よりも記憶力、集中力が低下してきた
  • 居眠りで交通事故をおこしかけた事がある


また小児の場合ですと、睡眠時無呼吸症候群は主に、アレルギー性鼻炎、アデノイド肥大、扁桃肥大が原因で起こります。症状としましては

  • 発育や発達の遅れ
  • 学力の低下、学校での居眠り
  • 集中力の低下
  • イライラして怒りっぽい
  • アデノイド顔貌
    (舌を突き出した顔つきになります)


などを引き起こす事があります。放置をしてしまうと成長に影響がでるため、早期診断、早期治療が重要です。

いびき・睡眠時無呼吸症候群を放置すると病気のリスクが高まります

高血圧

寝ている間に無呼吸を起こす事で交感神経が活性化し、心筋梗塞や脳梗塞の危険因子になります。

心臓病

心筋梗塞、大動脈瘤、心不全、心房細動等の不整脈を引き起こすリスクが高くなります。

腎臓病

睡眠不足、低酸素血症により、慢性腎臓病になりやすいと言われています。

認知症

無呼吸に伴い脳が低酸素状態になるため脳が萎縮し認知症が進む可能性、またアルツハイマー病が発生しやすくなる可能性が指摘されています。

糖尿病

睡眠の質が落ちると代謝が落ちて、脂肪が体に溜まりやすくなり、糖尿病になりやすくなります。

動脈硬化

酸欠に伴い血管に炎症を起こし、動脈硬化が進みやすくなります。

交通事故

眠っている間に酸欠状態になってしまうため十分な睡眠がとれず、日中の集中力の低下、眠気が生じる事により、交通事故を引き起こしやすくなります。

脳梗塞

睡眠時無呼吸症候群で動脈硬化が進んだ結果、脳の血管が詰まりやすくなり、脳梗塞を引き起こしやすくなります。

ED(勃起障害)

EDの危険因子として、睡眠時無呼吸症候群が指摘されております。治療はバイアグラ等のプロスタグランディン阻害薬の内服が第一選択となっておりますが、睡眠時無呼吸症候群を治療する事によって、EDが改善したという報告もあります。もしEDに加えて睡眠時無呼吸症候群を疑う症状があるようであれば、併せて検査、治療をする事をお薦め致します。

うつ

睡眠の質が悪くなることにより、気分が落ち込みやすくなります。

嚥下機能低下

いびきによってのどの神経が損傷し、のみこみが悪くなる事があります。

易感染性

睡眠時無呼吸症候群があると睡眠不足、低酸素血症による免疫力の低下により、感染症にかかりやすくなります。

いびき・睡眠時無呼吸症候群の検査

いびき・睡眠時無呼吸症候群の検査当院では睡眠時無呼吸症候群の在宅での簡易検査、生活指導、CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)を積極的に行っております。検査は全てご自宅でできますので、入院費がかかりません。また入院での検査とは異なり、いつも寝ている慣れた環境、寝具で検査が受けられるため、ご自宅で安心して眠れるので検査結果も正しく出やすい、というメリットがあります。いびきの精密検査をご希望の方は、お気軽にご相談ください。

Smart Watch PMP-300E(いびき・睡眠評価装置)

携帯型睡眠時無呼吸検査装置であるSmart Watch PMP-300Eは、睡眠時のいびきの大きさや睡眠深度・無呼吸や低呼吸の検出などを簡易的に検査する装置です。1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)・1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数のほか、いびきについての客観的評価が可能となります。睡眠時のため自分で、あるいは周囲で観察することができませんが、PMP-300Eなら睡眠中のいびきの客観的な評価をすることができます。簡易検査にも関わらず解析精度が高く、スタンフォード大学でも評価を受けています。

責任部位診断

視診や内視鏡検査により鼻や喉のどの疾患の有無を調べます。鼻中隔彎曲症や肥厚性鼻炎・口蓋垂・後口蓋弓による喉のどの狭窄の有無などを検査します。鼻閉による睡眠時無呼吸症候群や、無呼吸を伴わない単純性いびきに対して、手術治療が適応します。睡眠時無呼吸症候群の根治は難しいですが、のどの狭窄や鼻閉を改善することで、いびきや無呼吸を軽減できます。また、鼻閉を治すと、CPAP治療を行いやすくなります。

いびき・睡眠時無呼吸症候群の治療

鼻内の形態異常における手術

鼻内の形態異常として、鼻中隔彎曲症には鼻中隔彎曲矯正術・肥厚性鼻炎には粘膜下下鼻甲介骨切除術・アレルギー性鼻炎には鼻腔粘膜焼灼術・後鼻神経切断術があります。 手術治療が必要となった場合は、連携する専門の医療機関をご紹介しております。

1994年にレーザーによる口蓋垂口蓋形成術(LAUP)が報告されていましたが、術後の合併症の問題が大きく、米国睡眠学会では推奨されていません。2012年にLAUPに代わる軟口蓋の低侵襲手術として、咽頭形成術のCWICKsが報告されています。無呼吸を伴わない単純性いびきや、喉の狭窄による睡眠時無呼吸症候群において適応します。ただし手術の効果が期待できる患者さんは限られるため、慎重な手術適応の判断が必要です。肥満で無い、重症でない、口蓋扁桃が非常に大きい、45歳以下、などが挙げられます。

CPAP

重度・中等度の睡眠時無呼吸症候群において適応します。睡眠時、鼻マスクを装着し、空気を持続的に送り込んで、閉塞したのどを広げます。装着を止めると無呼吸は元の状態に戻ります。なお、鼻マスクが苦手な場合は、鼻入口にチューブを装着する方法もあります。保険適応で治療を行うにはまず基準を満たす事が必要です。具体的には簡易検査でAHI40以上、在宅PSGでAHI20以上です。またCPAP導入後は定期的な管理が必要となるため、1ヶ月に1回の通院が必要です。

減量

肥満によって舌のサイズが大きくなったり、おなかの脂肪が増えて横隔膜の動きが悪くなると、空気の通り道が狭くなり睡眠時無呼吸症候群が重症化しやすくなります。従いまして減量により脂肪が減ると、症状の改善が期待できます。ただしすくに減量をする事は難しいため、CPAPとの併用をおすすめしております。

16時間断食ダイエット

ここでは院長自身が実践しているダイエット法、16時間断食ダイエットについてご紹介をさせて頂きます。こちらの対象は、BMI25以上の肥満がある方になりますので、そもそも太っていない方には適応が無いため、ご了承下さい。太っていない方に対する効果は証明されていません。低血糖でふらふらしたり、活力が無くなったりするデメリットが大きくなる事があります。一方で間食が好きな方には、高い効果が得られる可能性があります。16時間断食ダイエットの期間は、1カ月以上は必要になります。
16時間断食ダイエットとは、1日のうちに16時間程度ものを食べない空腹な時間をつくる食事法を言います。空腹の時間を作る事によって、血糖値の上昇を防ぎ、体からインスリンを出す機会を減らします。
人間は10時間以上空腹の時間ができると、脂肪がどんどん燃焼しやすくなり、内臓脂肪が落ちます。空腹の間に成長ホルモンが分泌され、体が若々しく元気になります。腸内環境が改善し、免疫力が向上し、風邪をひきにくくなります。また断食の間にオートファジーといって、体の中の老廃物を排除する仕組みが働き、こちらの作用によっても免疫力が高くなります。また記憶力が良くなるという報告もあります。

・デトックス効果
・腸内環境の改善

成功の秘訣としては、食事ができる8時間に食べ過ぎない事です。ここで食べ過ぎてしまうと、血糖値が上がって内臓脂肪がたまってしまい、意味が無くなってしまいます。「16時間断食ダイエットが危険」という説は、主に「暴飲暴食」が原因となります。
16時間ではお水、お茶、無糖コーヒー(カフェオレはNGです)等、カロリーの無いものの摂取は可能です。野菜ジュースやプロテインなど。カロリーのあるものは摂取できません。
また成功の秘訣としては、夜18時にファスティングを開始し早めに就寝し、翌朝10時以降に食べるようにする事です。こちらですと睡眠時間をファスティングに入れる事ができるため、最もストレスが少ない状態でファスティングを行う事ができます。まずはこれを週末だけ実行するのもお薦めです。寝だめとファスティングを同時に行う事ができます。また寝不足やストレスがある場合は、それが原因で痩せにくい体質になっているため、睡眠を良くとる事も重要です。

抱き枕

体を横向きにして寝ると、無呼吸の症状が軽くなる事があるため、抱き枕を使って寝て頂きます。ただし治療効果としては不安定であり、他の治療との併用が必要となります。

マウスピース

顎の位置をマウスピースによってずらして、空気の通りを良くする治療となります。睡眠時無呼吸症候群が重症の方には効果は無く、適応は軽症の方に限られます。肥満が無く顎が小さい方は効果が出る事があります。

30秒でわかる睡眠時無呼吸症候群(SAS)